月と骨


月は骨に似ていると
言ってた人がむかしいた

それは折れそうな三日月が
肋骨(ろっこつ)あたりを思わせたのか
それともきいろい満月が
古びた髑髏(どくろ)に見えたのだろうか
ほんとのことはわからない

夜がひそかに降りてくるたび
月はその身に光を宿し
青の星へとかがやき放つ

飽きることなく放ち続ける

命かよわぬ月だけど
かつては生きていたのだろうか
そして地球にこがれたのだろうか

通じぬ思いをいだきつつ
苦しく激しい時を重ねて
ひとつの星が滅んでいった
大きな宇宙の片隅で

枯れてむくろは月になった
ひとり孤独な星の化石に

それでも心は忘れることなく
いとしい星にいつまでも
思いをこめて光をおくる
永遠に 変わることなく おくり続ける

月と骨
2 May.2004
厚口トレッシングペーパー
ペン、パステル、色鉛筆、アイシャドー
サイズ : B4
大好きな月をモチーフにした1 枚。
「デザインフェスタ!vol.19」
で発表。

愛したのは仮面だったッハの作品に「三声のシンフォニア 第15番ロ短調」という曲があります。
1分30秒以内のとても短いピアノ(またはチェンバロ)ソロ曲なのですが
きらきらと光るしずくが絶え間なく落ちてきては
地面とぶつかり、はねかえり、また飛沫をあげるような
美しくも躍動感あふれる旋律をしています。
その曲を聴いていて、このイラストのイメージが浮かびました。

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